患者さんのために働きたい!
チーム医療に加わりたい!
薬剤師の就職活動、転職の志望動機にはこのような内容がよく挙がります。
とても大事なことで必要不可欠なことだと思いますが、それだけでは不十分かもしれません‥
この記事では病院薬剤師歴10年の私が診療報酬改定の重要性を紹介します。
また、そこから薬剤師の将来、志望動機を考え、就職試験に役立てるまでを紹介します。
・病院・調剤薬局へ転職活動中の方
病院薬剤師がどのような考え方をして、働いているかを理解することは就職試験において重要です。
志望動機、小論文、面接対策でお悩みの方は参考にしてください。
また、病院の役割、収益の仕組みを理解した上で就職することで、就職してからの後悔を防ぐことができます。
病院での働き方について悩んでいる方も参考にしてください。
病院や調剤薬局の収益の仕組みを理解
患者さんのために働きたい、チーム医療に関わりたい、様々な志望動機があると思います。
しかし、病院や調剤薬局はボランティアではないため、やりたいことを何でもできるわけではありません。
その点を考える際に、病院の収益の仕組みについて理解しておくことは重要です。
日本の医療は医療保険によって成り立っています。(厚生労働省 我が国の医療保険についてより)
基本的に病院や調剤薬局は提供する医療行為に対して、その対価として診療報酬をいただいています。
診療報酬は患者への負担割合分の請求と、残りの割合を国へ請求することで、医療機関に収益が入ります。
患者さんは健康保険料を国に支払うことで、医療行為を受けた際に負担の一部だけ支払い、残りを国に支払ってもらっています。
そのため、どんなに患者さんのためになっても、診療報酬が設定されていなければ、タダ働きとなってしまいます。
タダ働きを繰り返していると医療機関の経営は立ちゆかなくなります。
そのため医療機関で働く際は、患者さんのためはもちろん大切ですが、診療報酬を考え、病院の収益と両立する必要があります。
診療報酬改定と薬剤師の働き方への関わり
診療報酬改定は2年毎に行われる、診療報酬の変更になります。
医療の方向性、目的に合わせて診療報酬は改定されます。
病院や調剤薬局の収益は診療報酬が中心となるため、薬剤師にとっても診療報酬改定は大事な情報となります。
例えば、2020年の診療報酬改定では次のような方針により改定が行われました(厚生労働省HP 令和2年度調剤報酬改定のポイント)
- かかりつけ機能の評価
- 対物業務から対人業務への構造的な転換
- 在宅業務の推進
2020年の改定では、対物業務から対人業務への転換の一貫として、連携充実加算の項目が追加となっています。
連携充実加算は病院の外来で抗がん剤注射の治療を受けている患者さんに対して算定できます。
病院薬剤師が調剤薬局の薬剤師へ情報提供や研修会を行うことが算定の要件となっており、病院薬剤師と調剤薬局薬剤師が協力することで、病院でも院外でも患者さんをサポートをしていける体制を構築することが目的になります。
外来がん患者さんのサポートの重要性は従来から言われていましたが、算定がつくことで病院として取り組むことができるようになり、多くの病院で取り組まれるようになりました。
上記の様に診療報酬改定により薬剤師の働き方は大きく変わってきます。
2022年も診療報酬改定の年になりますが、内容によって薬剤師の働き方も大きく変わるかもしれません。
※令和4年度の報酬改定は現在このような方針になっています ⇒ 厚生労働省HP(令和4年度診療報酬改定について)
就職試験では診療報酬の情報は大切
薬剤師の就職試験ではどのような薬剤師になりたいか、医療の今後についてを面接や小論文で聞かれます。
採用者の意図としては、コミュニケーション力や対応力の他に、しっかり業界研究ができているかを確認しています。
病院で求められる人材として、
- 行動力
- 思考力
- 伝える力
が挙げられますが、どれも積極性が大事になります。
診療報酬の知識などは国家試験の勉強では行われず、自ら調べなければ知らない学生も多いです。
病院がどのような取り組みをしているのか?その背景にはどのような理由があるのか?
病院見学でどのような紹介があったか?その背景ではどのように考えているのか?
まずは情報を集める行動力が必要です。
さらに集めた情報をもとに考え、自分の考えを伝える力が求められています。
診療報酬改定などの業界研究は情報収集を自ら行う行動力があるかを問われていると考えるとよいです。
就職試験での正解は?
就職試験に正解はありません‥が、大事なことは情報収集する行動力、集めた情報から考える力、自分の考えを伝える力になります。
将来などを聞かれた際に、理想を語ってもよいですが、考えた根拠は必要です。
根拠として診療報酬改定の方向性を用いることができます。
例えば、病院就職の場合、なぜ病院志望かを聞かれた際に、
「チーム医療に貢献したくて病院を志望しました」
だけでは、浅い志望動機と捉えられてしまいます。
上記の理由に診療報酬改定の情報を考慮した上で回答すると、
「近年、医師のタスクシフトが求められており、その中で病院薬剤師の役割は増えてきています。その大きな役割の中でチーム医療に貢献したいため病院を志望しました。」
などと説明できます。
こちらの方が少なくとも病院薬剤師の業界研究を行っていることが採用者に伝わるかと思います。
さらに病院の特徴なども調べた上で回答すると、よりよい印象になります。
また、あまりにも現在の医療体制とかけ離れた理想を話す場合は業界への理解が足りないと思われるかもしれません。
単純に業界に対する勉強不足と捉えられる可能性もあります。
病院からの視点だと、患者さんのためだから、チーム医療に関わりたいから、といった理由だけで入職する人はすぐに辞めるリスクがあると考えます。
なぜならそのような人は、経営の視点が抜けている人が多く、仕事に馴染めない可能性があるからです。
例えば経営の視点からすると、指導件数の増加は望ましいですが、そのためには一件当たりの時間を短くする必要があります。
急いで指導するより、丁寧な指導を行いたいと思うのは誰しもですが、件数を稼がなければならない時はバランスも大事になります。
経営の視点が抜けていると、そのバランスがうまくとれず、指導件数を稼ぐことがストレスとなってしまいます。
その結果として病院が合わないと辞めてしまうことも多いです。
大事なこととして、仕事は理想だけでは成り立たないということです。
そのことも踏まえた上で就職する人の方が、理想と現実の違いで挫折するリスクが少ないと思われます。
就職試験の回答に正解はありませんが、必要な情報収集とそれに基づいた自分の考えをわかりやすく伝えることが求められていると考えるとよいです。
まとめ
病院や調剤薬局はボランティアではありません。
しっかり収益を上げなければ、経営が成り立たなくなります。
病院や調剤薬局の収益の根幹は診療報酬になります。
そのため診療報酬によって薬剤師の働き方は変化していきます。
二年毎に行われる診療報酬改定の意図を理解することは、薬剤師の将来を考える上で重要になります。
また、薬剤師の将来については就職試験でも、頻出なテーマであるため、診療報酬について理解しておくことは大事になります。
診療報酬改定を理解することで、後悔のない就職、転職に繋げましょう。
診療報酬改定など薬剤師に必要な医療情報を集めるなら、こちらの記事も参考にしてください。
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