病院で働くなら、どんな薬剤師が活躍できるんだろう?
ジェネラリスト?スペシャリスト?
どのような薬剤師になりたいかは面接や小論文で頻出のテーマです。
このテーマの一つとして、ジェネラリストとスペシャリストのどちらの方向へ進みたいかを考えることができます。
私の考えとしては、どちらも薬剤師としては必要な要素なので、どちらかを選ぶというよりは、どちらよりの薬剤師になるかということになります。
この記事では両方の特徴を病院薬剤師歴12年の自分の目線から紹介したいと思います。
なりたい薬剤師像が定まっていない悩める新人さんや、これから就職活動の薬学生にぜひ読んでもらいたいです。
・新人薬剤師さん
最近では様々な認定や専門の薬剤師が設立されているのでスペシャリストを目指す薬学生や新人さんは多いのではないでしょうか?
2024年度からは集中治療専門薬剤師の制度も新しく始まりました。
実際に面接などでもそのような学生さんをよく見かけます。
しかし、私としては病院薬剤師はまずジェネラリストを目標にするのがよいと思っています。
これから就職する薬学生や新人薬剤師さんの目指す薬剤師像がこの記事から少しでもイメージできればよいと思います。
自分がスペシャリストとジェネラリストのどちらに向いているかを考えるには自己分析も大事です。
まだの方はこちらの記事を参考にしてください。
スペシャリストの特徴は高い専門性と新たな知見の開拓
スペシャリストは○○専門薬剤師や○○認定薬剤師などのように高い専門性を有する薬剤師になります。
特徴としては
- 専門分野としての知識を活かして医師と治療についてディスカッション
- 認定や専門を持っていると院外で名刺代わりになる
- 学会発表など新たな知見の開拓者となれる可能性がある
などが挙げられます。
スペシャリストのメリット
スペシャリストのメリットは次のようなことが挙げられます。
- 高い専門性
- 名刺代わり
- 学会発表・論文作成
スペシャリストは専門性を活かして、チームで活躍できることが大きな特徴になります。
私もNST専門療法士としてNSTチームの一員として働いていますが、医師と対等に話し合えるだけの知識を持って治療について話し合うというのは病院薬剤師の醍醐味といえます。
また、チーム以外での業務についても、認定や専門を持っていれば信頼されやすく相談されることが多々あります。
院外でも名刺一つで専門分野が伝わるので、初対面でも仕事の話がしやすかったりします。
新たな知見を学会などで発表することや、論文にして形を残すことも大きな仕事の一つになります。
これらのことは高い専門性が不可欠であり、スペシャリストの役割といえます。
スペシャリストのデメリット
スペシャリストのデメリットは次のようなことが挙げられます。
- 狭き門
- 時間・費用が掛かる
- 業務量の増加
専門薬剤師や認定薬剤師を取得することは、狭き門であり、望む人誰もがなれるとは限りません。
また取得した後も、業務で活かせるかは職場の状況にもよるため、取得したけど全く違う部署などということもあります。
専門や認定の取得・維持には各種学会の単位取得や学会参加が条件になることがほとんどです。
そのため、自己研鑽が必要になります。
また、維持するためには、学会参加費や資格の更新料などの費用がかかります。
専門や認定を持っていると院内で様々な業務が降ってきます(汗)
例えば自分の場合、TPNの組成の相談、経腸栄養剤の選択、NST委員会への参加、学生指導…など、資格を持った人には様々な業務が降りかかります。
資格を持った人への手当て等は無い病院が多く、残業が増えることがあるといえます。
⇒ おすすめの認定薬剤師は何?病院薬剤師が認定取得までの流れを解説
ジェネラリストの特徴は病棟活動における薬の専門家
ジェネラリストは専門分野を持たずに様々な分野の知識を持ち合わせるオールラウンダーのような存在になります。特徴としては、
- 医師の専門外を補う役割
- 場所を選ばずに(何処の病棟、保険薬局でも)薬剤師の職能を活かせる知識
などが挙げられます。
ジェネラリストのメリット
ジェネラリストのメリットには次のようなことが挙げられます。
- 医師の専門外を補うことで、医師から信頼される
- 働き場所を選ばない
医師は大抵自分の専門分野のことは聞いてこないで、専門外の薬剤のことを聞いてきます。
循環器内科の医師が降圧剤や抗不整脈薬の使い分け方を聞いてくることはまず無いですし、あったら不安ですよね。
チーム医療の中で薬剤師は医師の不足している知識を補う役割を持っています。
そして、薬のことは薬剤師さんに聞けば大丈夫って思ってもらえれば医師との信頼関係もスムーズに構築できます。
また、中小規模の病院では部署移動が頻繁な場合も多く、セントラル部門から病棟への異動や、違う病棟への配置換えなどもあります。
異動の度に薬剤の使い方を覚えるのは大変ですが、ジェネラリストとしての知識があれば柔軟に対応ができます。
さらに、薬剤全般の知識を得ることで調剤薬局でも働きやすくなります。
ジェネラリストのデメリット
ジェネラリストのデメリットは次のようなことが挙げられます。
- 一定の場所で働きにくい
- 特徴を表現しづらい
ジェネラリストは何処でも働くことができるため、一定の場所で働かないことも多いです。
例えば欠員が出た病棟への異動の候補になったり、新規開拓の部門への異動などの先駆者などになりやすいといえます。
また、ジェネラリストを示すようなわかりやすい資格が少ないため、自身の得意なところを表現しづらい場合があります。
就職試験では履歴書や面接の志望動機の回答例としてどんな薬剤師になりたいかは有効
どんな薬剤師になりたいかは面接ではよく聞かれる質問です。
また、小論文などのテーマに用いられることもあり、考えておくことは就職試験にも役立ちます。
答え方の一つとしてジェネラリストとスペシャリストについての自分の考えを答えることができます。
どんな薬剤師になりたいかの例
・ひとつの事を突き詰めることが好きなため、将来はスペシャリストを目指したい
・チーム医療においての薬剤師の役割は診療科を超えたジェネラルな知識でサポートすることと考えるため、ジェネラリストになりたい
裏付ける考えは必要ですが、なりたい薬剤師のイメージはしやすいため、答えやすいと思います。
また、なりたい薬剤師像に向かっての道筋を聞かれることもあるので考えておきましょう。
・認定薬剤師を目指すなら認定要件を調べておく
・ジェネラリストを目指すのであれば、3年目、5年目時点での目標など
志望動機に薬剤師像を考える際は、志望する病院の特徴と一致することも大事です。
近年の薬剤師の働き方 現場で求められる薬剤師とは?
薬剤の種類は年々増加しており、様々な分野の薬剤の知識が薬剤師には求められています。
今までも専門薬剤師などのスペシャリストには専門外の薬剤の知識もある程度求められていましたが、年々その水準は高くなっています。
病棟やチーム医療で活躍するには専門的な知識だけではなく、幅広い薬剤や病態の知識がまず必要とされるようになりました。
また病院では医師のタスクシフトに伴い、薬剤師の活動の場が広がっています。
救急、外来、在宅、手術室など従来の病棟と薬局だけではありません。
そのため新人薬剤師は、まずは幅広く高い水準での知識を身に着けるためにジェネラリストを目標にすることがよいと思います。
幅広く知識を身に着けた後に、自分で興味ある分野、専門的に働きたい分野でスペシャリストとして活躍することを考えることを私はおすすめします。
新人薬剤師の働き方について悩んでいる方はこちらの記事も参考にしてください。
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